ゲーム総合誌「ゲーマガ」の元編集長・ウメPが、いろいろ書き散らかします

【カメラ】EOS KissにEF50mm F1.8をオススメしない理由

IMGP5370-Edit

今から述べることは長年の経験に基づいたオレの持論であり、思いっきり個人的な偏見もあるので、不快な思いをする人もいるかもしれない。

しかし「年の功」という言葉があるように、「なるほど、ベテランはそう考えるのか」と受け止めていただけば幸いだ。

先日、キヤノンから新しくEF50mm F1.8 STMというレンズが発売された。このレンズは「撒き餌レンズ」と呼ばれていたEF50mm F1.8 IIの最新版で、初心者がステップアップするのに最適な激安単焦点レンズとしてどちらも非常に人気だ。

旧モデルとなるEF50mm F1.8 IIは9800円、今回発売されたEF50mm F1.8 STMも15000円ほどで購入できる。この記事ではどちらのレンズも「EF50mm F1.8」とする。

この価格で単焦点レンズが買えるのはキヤノンだけで、EOS Kissシリーズを購入した人は、まず間違いなく次のステップとして、この単焦点レンズEF50mm F1.8を購入する。

また、ビギナーのEOS Kissユーザーに、このレンズをオススメする人も非常に多い。

しかし、オレはEOS KissにEF50mm F1.8はオススメしない。その理由をこれから説明しようと思う。

このEF50mm F1.8は、レンズ表記では50mmとあるが、これをEOS Kissに装着すると80mm相当になってしまう。80mmといえば中望遠域であり、本気でポートレートを撮るならともかく、気軽に散歩などで撮影するのには使いづらい領域だ。

かつてのフィルムカメラ時代、50mmは標準レンズと呼ばれ、カメラを新品で買うとまず50mm単焦点がついてきた。昔のオジサンたちは、この50mm単焦点一本で、あらゆるものを撮影して腕を磨いていったのだ。オールドレンズに50mmが多いのも、それが標準だからだ。

しかし、EOS Kissに装着すると50mm表記レンズは80mm相当になってしまい、これ一本だけであらゆるものを撮ることは難しく、これはもはやカメラ上級者の腕試しに等しいといっても過言ではない。例えばコスプレ撮影の場合だと、TFT、TDC、コミケ、Dハロ仮装などで3~4人の集合など撮ろうと思ったら、相当バックしないと撮影できないだろう。

ゆったりとしたモデル1人に対しての個撮やピン写真ならこのレンズは威力を発揮するが、人が多いイベントや混雑な場所、散歩などではまったくオススメできない、というのがオレの個人的な評価だ。EOS Kissに50mmレンズは、あらゆる撮影に対応可能な組み合わせではないのだ。

とはいえ、このレンズをイチオシしたりオススメする人の気持ちもわかる。

安いレンズとはいえ、付属の18-55mm標準ズームレンズと比べれば、大きなボケのあるポートレート写真が撮れるのは何よりの魅力だし、価格からは考えられないほど描写性能も高い。

また、18-55mm標準ズームしか使ってこなかった人が、こんな明るい中望遠レンズで撮れば、写真がうまくなったと実感できて、撮影の楽しさも増すに違いない。

しかしだ。フィルム時代からカメラを知るオジサンとしては、まずは50mmの焦点距離であらゆるものを撮影できるよう練習してもらいたいのだ。初心者は、50mmの焦点距離をマスターせよと言いたい。

ところが、50mm表記のレンズをEOS KissなどのAPS-Cセンサーのカメラに装着すると、80mm相当になってしまうので、それではダメなのだ。

そこで、35mmと表記してあるレンズを装着すれば50mm相当となり、オレのオススメする本来の万能焦点距離となる。APS-Cに35mm表記レンズを装着した画角は人の目の画角(視野角)に近いので、見たままの画が撮れる。

メーカーもそこのところは理解しているようで、ちゃんとAPS-Cセンサー用に「35mm表記の激安レンズ」を供給している。

例えば、ニコンもペンタックスもソニーも、35mm表記の撒き餌レンズをちゃんと発売している。キヤノンほど安くはないが、それでも各社一番安価な単焦点だ。

ニコン AF-S DX NIKKOR 35mm f/1.8G
最安価格(税込):\22,500
http://kakaku.com/item/K0000019618/

ペンタックス DA35mm F2.4AL
最安価格(税込):\16,800
http://bbs.kakaku.com/bbs/K0000150354/

ソニーDT35mm F1.8 SAM SAL35F18
最安価格(税込):\16,890
http://kakaku.com/item/K0000140665/

このように、APS-Cで50mmの焦点距離となる35mm表記の激安レンズをラインナップに用意し、初心者ユーザーにちゃんとカメラがうまくなる正しい道筋を示してあげるのが、正しいメーカーの姿であり役目であり、それはメーカーの「使命」だとオレは思うのだ。

ところがだ。APS-Cセンサー用35mm表記の激安レンズがないのはキヤノンだけなのだ。「安くてよく写る35mm表記の激安レンズがない」という時点で、このメーカーは「初心者APS-Cのことは考えてないんだな」と思わざるを得ない。

まあキヤノンの方針としては、KissシリーズやAPS-Cは沼の入口で、わざと商品を充実させずにフルサイズに移行させて高単価で利益率の高いプレミアムレンズを売りつけたい、ということだろう(オレの思い込み?)。

繰り返しになるが、「この価格で高画質ポートレートが撮れるから、EOS KissにEF50mm F1.8はオススメ」とは、オレはいえない(ポートレートを撮りたいならOKだが)。

それよりも、ニコン、ペンタ、ソニーで激安35mm単焦点レンズを買って、脚で稼いで撮りまくったほうがうまくなると思う。

ときには背景をぼかしてポートレート風に撮りたいときもあれば、逆にパンフォーカスといって、近距離から遠距離までピントをあわせて撮りたいときもあるだろう。そのどちらにも対応できるのが標準レンズであり、撮影方法の工夫により広角的にも望遠的にも表現が可能なのだ。

単焦点の中でも、「ここでは背景をぼかして撮ろう」「ここでは背景までクッキリとピントをあわせて撮ろう」という撮影者の意図を反映しやすいのだ。「カメラは標準に始まり標準に終わる」などの格言もあるくらいで、初心者は、安易にEOS Kiss+EF50mm F1.8に走らず、APS-Cセンサー+35mm単焦点を使いこなしてほしい。

これは、長年カメラをやってきたオレからの願いでもある。過激な発言だが、初心者のEOS Kiss+EF50mm F1.8は撲滅してほしいとも思っている。

最近は、原点回帰をテーマにあえてズームレンズを持っていかずに35mm単焦点一本ですべての撮影をこなすこともあるが、機動性に富んでいて万能に使えた。

添付写真はオレが設定して知り合いのレイヤーさんに撮ってもらったモノだ。どちらもAPS-Cに35mm単焦点で、左は背景をボカした望遠ポートレート風にしたくて、そう設定した。右は画面の隅々までピントをあわせたかったので、広角パンフォーカス風に写るように設定した。だからボケは弱い。

APS-Cセンサー用35mm表記の激安レンズがないのはキヤノンだけ。だからキヤノンは嫌いなのだ。逆にオレがペンタックスをオススメする理由は、本体に手ぶれ機能が内蔵されているので、35mm表記の激安単焦点レンズでも手ぶれ補正が有効となるからだ。

なので、K-r、K-30、K-50などの本体にDA35mm F2.4は、マジオススメ。使いこなせたら、カメラがうまくなること間違いなしだ。

誤解のないよう言っておくと、ポートレートを撮るためなら、EOS KissにEF50mm F1.8はアリだと思います。

関連記事

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

スポンサーリンク

ウメ/プロフィール

92年セガ入社。AM2研でバーチャファイターなどの広報を担当、97年に雑誌の編集へと転身し、2004年にゲーム総合誌ゲーマガの編集長に就任。アイマス、街、逆転裁判、初音ミク、中川翔子連載、喜屋武ちあき連載、あきまん連載、Beep復刻版書籍などを担当。2012年4月ドワンゴに転職、2014年3月同社を退社。岐阜出身。今一番熱い趣味はコスプレ(イラスト:岩元辰郎)

このブログについて

ゲーム総合誌「ゲーマガ」の元編集長・ウメPが、アニメ・ゲーム・コスプレなどのアキバ系カルチャーの魅力をお伝えする個人ブログです。

独自の視点と切り口で、マニアックな情報や無駄な知識と自己主張をお届けしますので、好き嫌いがわかれるかもしれません。もし気に入っていただけましたら、ツイート、ブックマーク、お気に入り登録などなどお願いします。

ブログ内検索

権利について

当サイトに掲載している画像の肖像権・著作権・所有権は、メーカー、モデル本人、所属事務所、各権利所有者及び撮影者に帰属します。画像の複製・転載は禁止させていただきます。関係者より掲載内容の訂正や削除の要請を受けた場合は、内容を確認の上、速やかに対応いたします。